さいたま市大宮区にて 大三島の胴丸・大三島の腹巻等刀剣書買取

大三島の胴丸・大三島の腹巻等刀剣書入荷しました。三部作の一つ大三島の鏡は、種類が違いますのでありませんでしたが、部数は少ない書籍です。いずれも大山祇神社発行によるものです。ありがとうございました。

発刊の辞

瀬戸内海のほぼ中央、内海のうちでもとりわけ島々の輻湊する芸予諸島の中心をなす大三島は、瀬戸内海国立公園のなかでも景勝の地として知られ、内海航路の要衝の島として早くから開けた。

大山祇神社は島の西の要津宮浦港から内へ一キロ余、安永年間に墾かれた宮浦新地をぬけた 所に位置し、国の天然記念物に指定される楠群に覆われ、本殿の奥には神體山鷲ヶ頭山が聳える。 – 御祭神大山積神は、山の神、名は大山津見神を生み『古事記』、山の神等を山祇と号す『日本書紀』とあるように、山神としての御神徳が知られる一方、和多志神『伊予国風土記』、即ち渡 航の安全を祈る神としても汎く知られた。

三跡の一人藤原佐理が神額を奉納して航海の安全を祈った、大鏡の記録も海神大山祇神社信 仰の左証であろう。

加えて伊予の豪族であり水軍の武将として活躍した河野一族が、我が氏神として篤い信仰を 永年にわたって寄せたため、やがて瀬戸内水軍の守護神として喧伝されるに至った。 -このたびの特別展「大三島の胴丸」に出陳される胴丸も、すべて大山祇神社の信仰に起因す るものであり、拝観される諸兄は神社の数々の宝物を通して、永年にわたる水軍信仰を思われ ることだろう。

松平定信によって編纂された『集古十種』以後当神社の宝物、わけても武具類は多くの人に 注目されてきた。その声が大正十五年の国宝館開館となり、次いで昭和三十七年の紫陽殿建設 となった。のち両館をあわせて昭和四十三年一月大山祇神社宝物館とし登録博物館となる。 本年八月は紫陽殿開館から三十年の節目を迎えるので、これを記念して特別展「大三島の胴丸」を開催することとした。

この機に、かって文部技官として当神社甲冑類の調査研究にあたられた鈴木友也日本刀剣博物館専務理事の解説を頂いて本書が出版されることをよろこぶものである。

平成三年八月　大山祇神社宮司

発刊の辞

乎知の郡、御嶋(愛媛県越智郡大三島)座す神の御名は大山積の神、一名は、和多志の大神 なり。是の神は、難波の高津の宮に御宇しめしし天皇(仁徳天皇)の御世に顕れましき。(伊予風土記)

大山津見神・大山祇神は古事記・日本書紀に山の神としての御神徳が記されているが、大三島鎮祭の大山積神は古来、和多志神即ち海神としても崇敬をあつめていたことが明らかである。 加うるに瀬戸内水軍の武将として活躍をした河野氏が、一族の氏神として篤い信仰を寄せた ため越智氏・河野氏をはじめ多くの水軍武将が鎧・太刀などを奉納して祈願を重ねるところと なった。

このことがやがて日本一と喧伝される武具を中心とする美術工芸を宝蔵する因となったもの であろう。

さて、当神社では所蔵する宝物の図録を大正十二年『大山祇神社大鑑』と名付けて上梓以来、幾度か版を改ためてきたが、その全てを収録し解説を加えたものはなく、現在のものも国指定 の代表的な宝物に限られている。

右の事を勘考し、その補完の意も含めて平成三年八月『大三島の胴丸』と題して国宝赤絲威鎧(かって胴丸鎧と呼ばれた)等計二十八領の胴丸全てを写真並解説を付して発刊し、次いで 平成四年九月『大三島の鏡』のタイトルで国宝禽獣葡萄鏡はじめ当神社に伝わる一一四面の鏡 を全て写真で収録、併せて法量解説を付して発刊した。

今回の、『大三島の腹巻』は前述二書の続刊とも言うべきもので、当神社が所蔵する重要文化 財指定腹巻二十領の他、兜・大袖などそれぞれ単独で国の指定を受ける宝物について、写真並 びに解説を付して発刊するものである。

平成六年一月　大山祇神社宮司,三島喜德