東京都足立区より 天下之絶景朝鮮金剛山 宅配買取

今回は大正期の写真集を2冊紹介させていただきます。1冊は朝鮮の金剛山の写真集で、もう1冊は大鎧著初式の図録になります。いずれも大正時代の発行ですので残存部数は少なそうです。

天下之絶景朝鮮金剛山　大正7年の発行ですが、日本語と英語のキャプシャン付きです。大正期の朝鮮金剛山の写真集は希少品です。

こちらは大鎧著初式、小村大雲氏の熱の入れようが伝わってきます。

時は唯れ大正七年四月二十八日、我が風俗研究會は名誉学員小村大雲画伯の爲めに古式に據りて大鎧著初式を平安神宮神苑に挙げ、式畢りて更に出陣式に擬せる行列を整へ、神宮に参向し神饌を供して奉告の式典を行ふ。此の日天氣晴朗、苑池を掠むる風暖く、林泉の翠色滴るが如し。鍬形うちし星兜、侍 烏帽子委烏帽子、よろふる多し大鎧、さては胴丸、腹恋の絨の色もどりくに都の花の春を競ひ、噴物 造の太刀長刀は秋の霜を欺きか。八幡大菩薩と題したる一族の旌旗を春風に靡かせ、螺を吹き鼓を撃ち、 鎧の袖を列ね、弓箭を帶して練步せる武者振はそころ源平の當時を偲ばしむ。嗚呼わが旧都の山川若し 心あらば吾人と等しく懐古の念を禁する能はざるのみならず、室町時代以降漸く廢滅しゆきし古式甲冑 を著用せし武士聚團の偉觀を目撃して嘆賞の聲を放ちしならむ。

按ずるにこの大鎧著初式、中古には武門大禮の班にありしを星霜移り、世態改りて、徳川氏覇権を握りてより、其の儀殆んど廢滅に歸し、明治の聖代また好事家の時に試みられしものなきに非れど一再を過ぎざりき。小村大雲画伯と考古癖に富まる。夙に甲冑武器を蒐集し、潜心研鑽〇に年あり、客歲函人に命じて大鎧を製せしめ、亦自ら手を下してその工を助け、一歲を費して終にその工を竣へらる。我 が風俗研究会乃ち画伯に謀るに著初式挙ぐるの好機を以てせしに画伯は即ち双手を挙げて曰く諾と。爾後君は百方苦心の結果著初式の要具を或は蒐め或は新調し、殆んどこれに没頭する幾旬にして 猶足らざりき。書伯の趣好斯の如く夫れ深甚に、斯の如く夫れ熱心なり。書伯常に好んで武人風俗を描き、その絶妙天下に稱せらる。その由つて來る所豊夫れ画伯の天景の才のみならむや。

明治維新來泰西の文物腰々さして我が國に将来せられ、風俗故実の学永く衰頽、殆んど存在を認められざりき。若し夫れ永遠に斯の如くんば、遂に我が国粹風欲を如何。我等威に変に感ずる所ありて風俗研究會を興し、専ら公武私寺民間の故實風俗を理論と実際さの兩方面より研究指導し、併せて古儀の混 滅を防ぐに努む。この事業は幸ひに世の識者の翼賛せらるゝ所となり、今や会運日に月に隆々、本邦学会の重鎮の一に位す。大雲画伯ありて大鎧著初式起り、本会ありて大鎧著初式全し。而してこの式あり て本会の光栄また餘ありさ謂ふべし。

今本会この盛儀を永久に記念し、併せて考古の資に充てんが爲め、從來刊行せる歴代風俗写真集第七輯として本集を世の好古家に頒つ。緬けば乃ち源不鎌倉時代の風趣吾人に逼り来るの威あらむ。本集發 行に當り聊か出版の求歴を記して序に代る。若し大鎧著初式沿革及び甲冑著用次第の變遷に就て多く聞くを望まれなば、請ふ、本会の機關雜誌「風俗研究」第十四號の拙稿を讀まれむことを。

終に臨み杉谷安神宮々司は本会のこの學を賛し、自ら鎧親の役に當られ且神姫使用等に關し種々の 便宜を與へられ、小村大雲画伯は多額の費を投じて本会の此の準を補助せられ、諸役列の諸賢は自家珍藏門外不出の甲冑武器を自ら著用して本式をして益盛ならしめられたり。その他直接間接に本会の爲め斡旋の夢を取られたる人少なからず、今一々芳名を記するの遣なし。上記の諸賢に関し深く其の厚意を感謝す。

大正七年六月晦日　主幹江馬務 識