正伝柳生心眼流兵法術他武道書買取。星国雄・島津兼治　平成10年発行と比較的出版年度が新しい割にはあまり見かけたことがありません。ありがとうございました。

• 幻の写真集の発刊経緯に附いて

水い歳月にわたり東北の武術は、知られる事なく静かに伝承されて来ました。有名な戦前の武術史の本を紐解きます と、「柳生心眼流・・不 詳」とありました。その名著に於きましても東北の流派解説が少ないことがわかりました。

私が昭和三十八年から柳生心眼流の調査を始めました時には、流儀の歴史を解説出来る方は皆無の状態でありました。 まず初めに宮城県立図書館を訪れ、各地の郷土誌より基礎的資料の採集から始めました。当時は、現代の様に便利なコ ピー機械はなく一つ一つ写筆して集めました。郷土資料を基に飯野川警察に小山左門の子孫を捜して頂きまして、警察 の案内で始めて小山左門宅を訪問致しましたのが始まりでありました。その後毎年正月の休日を利用して、各地を自分 の足で歩きました。なにせ徒歩は行動半径が狭く、長期間掛かって調査を繰り返して、やっと概要を纏めることが出来 ました。人生とは不思議な物です。昭和四十五年に柳生新陰流の大坪指方師範より「君が長年に渡って研究した柳生心 眼流を、柳生流の分派として紹介する気はあるか…」と声を掛けられました。

昭和四十六年度NHKのテレビ大河ドラマの放送は、柳生新陰流の物語を劇化した「春の坂道」と決定しました。こ れに依り人物往来社発行の「歴史読本」は、昭和四十六年新年号に「立体構成・柳生一族」の特集を組む企画を立てま した。此の趣意は、私にとっては願ってもない申し出でありました。長年の成果を発表する好機を得ましたので、即座 に承諾し担当の方を紹介して頂きました。企画を作り、資料構成と現地の取材の行動計画を練りました。桃生郷土歴史 研究家・姫松堂先生と連絡を取りまして用意万端整えました。

人物往来社の記者と大坪指方師範を伴い、星国雄宗家と共に現地取材を完了して、初めて柳生心眼流の歴史が一般雑誌で世間に紹介されました。地元の人々も歴史に対して理解を示し、長年の労苦が実り一区切りが出来ました。

昭和五十年に成りますと、中国武術研究家の松田隆智氏が「謎の拳法を求めて」と云う書籍を発刊されました。同書の古武道編に採りあげられ、柳生心眼流が初めて武道の専門誌に紹介されました。この名書は武術を志す若者達や多くの武道関係者に読まれました。此の書に依って我国の異色拳法武術として、柳生心眼流は内外に広く知れ渡る様に成りました。引き続き松田隆智氏は「秘伝日本柔術」の著述に当たりました。この時、松田氏より柳生心眼流柔術を再び紹介したいと相談を受けました。誠に有り難い申し出でありましたので、快く長年の調査記録の「研究ノート」を提示いたしました。秘伝日本柔術は昭和五十三年に完成し、柳生心眼流の歴史から伝承者、実技に到るまで初めて纏めて頂き ました。此の武道専門書に依って、柳生心眼流の全体像を世に発表する事が出来ました。此の縁に依りまして、柳生心眼流の本格的な術技編の著述を勧められました。早速「秘伝日本柔術」の姉妹編という構想を基に、専門的な入門技術書としてでなく、柳生心眼流の全体的な姿を理解出来る総集編として「甲冑拳法柳生心眼流」の本を世に送りました。此の書籍は柳生心眼流の全体を知る事のできる最初の本と成りました。此の本には後日談があります。無形文化財指定に御尽力なされました大坪指方師範は、無形文化財指定調査の審査日に「甲冑拳法柳生心眼流」の本を持参して頂きました。大坪指方師範は此の書を文化財委員の方に提示を致しました。委員の方が此 の本を一読し「このような本が出版しているのも知らず、申し訳ありませんでした…」と話されたと云われました。更 に「君の本が指定の影の一助となって良かったですね…」と聞かされました時には、万感詰まるものがあり拙書がお役 にたちました事は光栄でありました。

昭和四十九年の末に雨漏りがする古工場跡を借り受ける事が出来ました。数カ月の日々を重ねて手作り道場が仕上がりました。星国雄宗家には、道場の完成を心から喜んで頂きました。昭和五十年に星国雄宗家は道場完成を祝い、十数年間にわたり伝授して頂いた相伝技を、忘れない為にと「備忘録」の記録撮影をいたしました。それから現在までの二 十数年間に渡り、「備忘録写真帳」は書架に秘蔵されたままに成っていました。この度は、宗家の英断により長年にわたる個 人秘蔵記録を公開に踏み切りました。膨大な量の記録写真の中から一部を選び出して、同門の希望者に譲る事になりました。

 改めて一枚一枚振り返り見ますと、若くして元気に稽古していた頃の息吹を改めて実感を致しました。当時の撮影記 録を見ますと、フイルムの関係で基礎技法の大半部分はカットした処が多く、編集に当たっては不足部分を同じ動作の 写真を使用して補充を成して、全体の流れがわかる様に構成編集を致しました。 「養影当時は、素人の不慣れな撮影により露出設定が悪く、写真の出来上がりが悪く、見にくいと思いますが技術不足 は同意容を下さる様お願い申し上げます。