万年青・榊原八朗・これまでに類を見ない豪華な大著でそれ自体現代におけるおもと界の隆盛を象徴

万年青と書いておもとと読みますが、国風盆栽の図録などを買い取っているため時々そうしたものと一緒に植物関係の図録が入荷します。今回もそうした植物関係の大型図版集で万年青が入荷しました。万年青の知識は全くありませんので下記はコトバンクからの引用です。

万年青:ユリ科の多年草。山地に自生し、肥厚した地下茎から多数の濃緑色の葉を出す。葉は長さ30~50センチで、厚くつやがある。春、短い茎を出して淡黄色の小花を穂状に密集してつけ、は丸く赤色、まれに黄色。園芸品種が多い。

昭和47年の発行でしかも限定版にもかかわらず時々入荷してきますし、しかも目立たないながらも地味に売れているいわゆるロングセラー商品です。佐藤達夫序文・榊莫山題字とかかわっている方も何気に豪華です。残念ながら買取の値段はたいした金額はお付けできないのですが、地味ながらも売れているロングセラーや気になった商品(いわゆる珍品)などをコラムでは紹介していきたいと思います。読んだかたいらっしゃれば感想文なども募集中。コラムにて紹介いたします。
万年青・榊原八朗

植物学上は、ロデア・ジャポニカ、つまりおもと一種であるはずのものが、まことに多種多彩で、覆輪、縞、斑、獅子葉、甲竜など、一鉢一鉢、別種かと見まちがうばかりにそれぞれ気品のある個性を発揮し、どのひとつを見ても、格調の高い立派な芸術品となっている。そして、その味の深さはいつまで眺めてもあきることがない。まさにそれは、自然の 摂理と人間の技巧との融合の極致だと思ったのであった。

こんど、親子三代、八十年にわたるその道のベテラン三光園の榊原八朗さんの編著によって、この本が出版されることになった。これまでに類を見ない豪華な大著で、それ自体、現代におけるおもと界の隆盛を象徴しているが、その精巧な実物大の原色写真は、まったく生品そのものの迫力をもっている。これによって、今日の稀品、貴種が、身近に鑑賞できることは、まことにありがたいといわなければならない。またそれは、古来の伝統と現代の愛培家の情熱の結晶であり、昭和のおもとの姿を後世に伝える大きな使命をはたすものともいえよう。

レジャーの有効利用が時の話題となっている今日、こういった方面の趣味も、ますますひろがり高まってよいと思う。そのためにも、本書が有力な触媒となることを期待してやまない。
昭和四十七年九月