今回ご紹介するのは、かつて宮中で使われていた、気品あふれる伊万里焼の記録をまとめた一冊です。

「禁裏御用品」――そう呼ばれる器をご存知でしょうか。 江戸時代、天皇の食膳には菊御紋をあしらった格調高い伊万里焼が用いられていました。驚くべきことに、これらは毎月一日に新調され、使い終わった品は「お下がり」として公家や女官たちに下賜されたといいます。
本書は、藤原北家の流れを汲む名門・山科家(やましなけ)に伝来した約200点もの貴重な御所の器を網羅した、極めて希少な資料です。
この一冊の注目ポイント
初公開された「禁裏御用品」の全貌 長らく山科家で守り伝えられてきた皿、杯、さらには煙草盆や香炉まで。これまで目に触れる機会が少なかった様々な種類の「御所の器」が、鮮やかな記録として収められています。
宮中の暮らしを映し出す資料 単なる器の紹介にとどまらず、宮中行事を描いた絵図や、有田に残る歴史資料、公家町遺跡から出土した陶片などもあわせて紹介。江戸から明治にかけての宮廷文化の息遣いを、視覚的に感じることができます。
清らかな「伊万里焼」の美 菊御紋が施された染付磁器の凛とした佇まいは、まさに日本美の結晶。18ページという薄さながら、掲載されている図版の一つひとつから、禁裏ならではの清らかで気品ある美学が伝わってきます。
資料としての価値
ページ数は少ないものの、特定の公家に伝来したまとまった数の禁裏御用品を網羅している点で、陶磁史・文化史の観点からも見逃せない一冊です。





