【本日の気になる一冊】「激論」から生まれたハコと魂 ―『高知県立高知城歴史博物館・建築の記録』

新しく誕生する博物館の舞台裏、その「建築」だけにスポットを当てた記録集をご存知でしょうか。今回ご紹介するのは、2017年に開館した**『高知県立高知城歴史博物館・建築の記録』**(2018年刊・56P)です。

通常、博物館の開館記念誌は展示品が主役になりますが、建築そのものに特化した記録は非常に珍しく、それだけで本書の特異な価値が伝わります。

高知県立高知城歴史博物館・建築の記録

この本のみどころ:単なる「建物」の説明ではない

  • 「冒険的」な5つの使命: 資料の保存という伝統的な役割だけでなく、「地域振興・観光振興」という、現代の高知県が抱える課題に踏み込んだ冒険的な使命が、設計にどう反映されたのか。その思想の根源が綴られています。

  • 図面に込められた「覚悟」: 行政、設計者、建築家、そして博物館関係者。限られた面積の中で理想を形にするため、時に「激論」を交わしながら作り上げられたプロセスの重みが、館長による序文から痛烈に伝わってきます。

  • 細部(ディテール)に宿る意味: 館内を歩く際、何気なく目に触れる空間や部品の一つ一つ。本書を読めば、それらすべてが議論の末に導き出された「必然」の結果であることがわかります。

資料としての希少性

土佐藩主山内家伝来の6万7千点もの至宝を守るための「究極の器」を、高知の人々がどう定義したのか。わずか56ページの中に、これからの高知県の文化活動を左右する建築への「理想と覚悟」が凝縮されています。


展望ロビーから高知城を望む時、足元にあるこの建築が、どれほどの「熱意」で建てられたのか。本書を読んだ後では、いつもの博物館がまったく違った景色に見えてくるはずです。

建築関係者だけでなく、地域文化を愛する方にもぜひ手に取っていただきたい、非常に「濃い」一冊です。