今回ご紹介するのは、2010年に東京国立博物館で開催された特集陳列の図録、『清朝末期の光景 ―小川一眞・早崎稉吉・関野貞が撮影した中国写真―』(40P)です。

40ページというボリュームは一見物足りなく感じるかもしれませんが、その中身は、明治時代の日本が総力を挙げて記録した**「中国建築・美術のタイムカプセル」**とも言える密度を持っています。
この本の見どころ:伝説の写真師・小川一眞の仕事
最大の注目は、明治〜昭和期の代表的写真家であり、帝室技芸員でもあった**小川一眞(おがわ かずま)**による「北京城写真」です。
紫禁城の荘厳を写す:明治34年、旧岸和田藩主・岡部長職の提言により実現した東京帝国大学の北京城調査。小川はこれに同行し、当時の紫禁城の壮大さを、写真という最新技術で見事に記録しました。
美術紹介の先駆者:雑誌「国華」の発行や、日本初のコロタイプ印刷を手がけた小川ならではの、記録性と芸術性を兼ね備えた視点は、建築学・美術史の第一級資料となっています。
三者三様の視点:美術研究と建築史の融合
小川一眞に加え、二人の巨星の仕事が収録されているのも本書の大きな魅力です。
早崎稉吉:岡倉天心の弟子であり、東京帝室博物館(現・東博)の依頼で河南・陝西地方の仏教美術を調査。
関野貞:高名な建築史家。明治末期の山東・陝西地方を巡り、歴史的建造物の姿を学術的に記録。
「薄い」からこそ際立つ、情報の純度
確かに40ページと薄手ではありますが、掲載されているのは全113件に及ぶ展示作品のエッセンス。特に、現在では失われたり改変されたりしてしまった清朝末期の貴重な光景が、日本人のレンズを通して克明に記録されています。
**「小川一眞が撮った北京」**というだけで、写真史・中国史ファンには垂涎のトピック。 手軽に、しかし極めて質の高い「100年前のアジアの空気感」に触れたい方におすすめしたい、専門性の高い一冊です。





