【本日の気になる一冊】死後の世界を彩る「形」の系譜 ―『漢・唐時代の陶俑』

今回ご紹介するのは、2015年(平成27年)に東京国立博物館で開催された特集陳列の図録、『漢・唐時代の陶俑』(24P)です。

24ページという薄さではありますが、そこには中国古代の霊魂観から、日本におけるコレクターたちの審美眼まで、非常に興味深いストーリーが詰め込まれています。
漢・唐時代の陶俑 漢・唐時代の陶俑

この本の見どころ:陶俑(とうよう)が語る時代と文化

陶俑とは、死者が後の世界で不自由しないよう、兵士や召使、家畜などをかたどって墓に納められた「やきものの人形」です。

  • 漢時代の素朴、唐時代の華麗: 前漢時代の文化的な成熟を感じさせる素朴な造形から、シルクロードの香りが漂う唐時代の国際色豊かな美しさまで、その変遷を東博の優品とともに辿ります。

  • 画家の眼が認めた美: 実は、日本で陶俑がいちはやく評価されたのは、伝統的な茶道具の枠に捉われない「実業家や画家」たちの間でした。安田靫彦や小林古径といった名だたる画家たちが、静物画のモチーフや歴史画の考証資料として陶俑を愛蔵したという事実は、美術ファンにとって非常に興味深い視点です。

「薄い」からこそ際立つ、情報の「質」

確かにボリュームは少ないですが、明治43年から陶俑を収集してきた東京国立博物館の「受容の歴史」までもが網羅されている点は、専門機関ならでは。単なる展示品の紹介にとどまらず、なぜこれらが日本で大切にされてきたのかという「審美の歴史」を一気に読み解くことができます。

こんな方におすすめ

  • 中国古代美術やシルクロードの文化に関心がある方

  • 小林古径や安田靫彦など、近代日本画家のインスピレーション源に興味がある方

  • 短時間で質の高い専門知識をインプットしたい方


ページ数は控えめですが、そこに記された「美への慧眼」は一読の価値あり。 デスクの傍らに置いて、時折ページをめくっては古代中国の豊かな精神世界と、それを愛した日本人の感性に思いを馳せたくなる一冊です。