【本日の気になる一冊】祈りの源流、掌の上の小宇宙 ―『東アジアの金銅仏・愛らしき仏たち』

今回ご紹介するのは、1999年に奈良の大和文華館で開催された特別展の図録、『東アジアの金銅仏 ―愛らしき仏たち:中国・韓国・日本―』(160P)です。

仏像の図録は数あれど、金銅仏だけにスポットを当てたものって、実はなかなかお目にかかれないんですよね。 今回紹介するのは、1999年に大和文華館が編纂した160ページ。 木彫の大きな仏様とは違う、あの『掌の上の小宇宙』とでも呼びたくなる独特の存在感が、この一冊にぎっしりと詰まっています。

「金銅仏(こんどうぶつ)」とは、銅で鋳造し、表面に金メッキ(鍍金)を施した仏像のこと。 本書は、当時の学芸部課長・村田靖子氏による長年の研究成果が結実した、東アジアにおける金銅仏の系譜を辿る決定版ともいえる一冊です。

東アジアの金銅仏 ―愛らしき仏たち:中国・韓国・日本

本書の読みどころ:三国の「祈りの形」が交差する

  • 積年の研究の集大成 昭和57年の「百済・新羅の仏像」、平成4年の「中国の金銅仏」という二つの重要展示を経て企画された本展。中国・韓国・日本の三国の作品を網羅し、日本の仏教彫刻がどのように誕生し、形成されていったのか、その源流を克明に描き出しています。

  • 「愛らしき仏たち」という視点 金銅仏の多くは、寺院の奥深くに安置される巨像とは異なり、掌に収まるような小像も多く含まれます。副題にある「愛らしき仏たち」の言葉通り、そこには親しみやすく、かつ気高い、古代の人々の純粋な信仰の形が凝縮されています。

  • 奇跡的なラインナップ 東京・京都・奈良の国立博物館をはじめ、各地の名刹(興福寺、當麻寺、観心寺など)や個人蔵家から集められた貴重な名品の数々。160ページにわたる豊富な図版と解説は、今なお金銅仏研究における重要なリファレンスとなっています。

資料としての価値

東野治之氏(奈良大学教授)や松山鉄夫氏(大東文化大学教授)といった権威ある先生方の論文も収録されており、単なる展示記録を超えた、学術書としての重みを備えています。1999年当時、法隆寺宝物館の新営により金銅仏への関心が高まった時期に編纂された、非常に密度の高い内容です。


冷たい金属に命を吹き込み、時を超えて黄金の輝きを放ち続ける仏たち。 日本仏教美術の「黎明期」の熱量を肌で感じることができる、コレクターや研究者必携の重厚な一冊です。