茶道古典全集など茶道書送っていただきました。千宗室氏による監修です。ありがとうございました。
日本の茶道は、その成立のはじめから今日までの間に、日本人のあらゆる生活分野に滲透し、心の欣びと豊かさをもたらし、日本独自の文化的遺産ともな り、また固有の生活體系をかたちづくるまでに到った。
現今の茶道の隆昌も、このながい茶道の歴史に負うところであり、傳統の力 に依るものと信じたいのである。即ち、茶道の大成するに至るまでには多くの 先人の撓みなき勵みの賜があると言える。これには、古くは中国、唐宋の古え より和漢を通じて今の日に到るまで、茶道に捧げつくされた先匠の遺方を思わねばならぬと考えるのである。
茶の道を究めること、如何に遠く且つ難かしいかは、それぞれこの道に励まれた先匠の述作にもうかがわれる。古典を縮くの要またここにある。 したがって茶道の真髄に到らんとするには、まず茶道の成立するところ、またその傳統を顧みればならない。ここに茶道にあって古典が重んぜられる所以がある。
古典は、既成の文化の宝庫であり、新しい文化が生れる母胎であると言え る。それは、ながい歴史をもつ茶道に於て、最も痛切に感ぜられる所のものである。しかも古典はほろび易く、ともすれば忘れられんとするみがある。
幸に今日、これら茶の古典の集大成を見るに到ったが、これが、茶道のかがみとして、現代の茶道をてらし、又将来の正しき茶のあり方を示す灯びとならんことを願ううものである。