綿谷雪・山田忠史氏による武芸流派大事典 山岡荘八・海音寺潮五郎・今村嘉雄・推薦 綿谷雪氏の本は過去何回か紹介いたしましたが、本書はそのなかでも最も有名な本と思われます。武芸流派辞典の増補改訂版ともいうべき本で、武芸研究者必携の書、いわば定番書になります。下記の画像のものは昭和44年版です。復刻版なども出版されていますので今でも古本屋さんの店頭で手に入れられるかもしれません。
下記は以前紹介しました綿谷雪氏の著作になります。ご興味がある方は併せてご覧ください。
綿谷雪・武術史研究・雑誌武芸帖合本・第一巻・第二巻
念流馬庭代々記・無名氏稿本・綿谷雪
制剛流捕手やわら縄居合伝書類・綿谷雪
日本の武芸全流派人名系譜・武芸研究者必携の書・武芸の大宝典
山岡荘八・海音寺潮五郎・今村嘉雄・推薦

昭和二十八年、文部省保健体育審議会で柔道・剣道が 体育教材とみとめられてから、柔道・剣道は、堰を切った水のように、学校・一般人のあいだにひろまり、ようやく戦前の全盛期をしのぐ勢いを見せています。
現在では、原則として武芸は、全国高校の正課目とし てあらゆる学生に課せられ、いわば,人造り、の一翼をになう重要な因子の一つとして、とくべつな意味をもつようになりました。
もちろん、現在の柔・剣道は主として競技としておこ なわれ、いわゆる「道」といった精神面のきびしさは余 りありません。これも時節柄といえばそれまでですが、それにしても、その底流には、やはり日本伝統の古武道 がにその精神をもとめようとする風潮が、漸次に高まりつあつある趨勢は、見のがせないように思います。
今は、腰に刀をさして歩いた時代とちがうのだから、 「術」と「道」との裁断は、武術が学校の教育課目にとりあげられる以上は、軽卒な取りあつかいを許されるは ずはありますまい。私たちの『武芸流派大事典』が、率 直にその問いに答えてくれるとは、云う自信はありませ んが、それにしても、その手がかりだけは、きっと、こ の中にあるだろうと思うのです。
本書は、私たちが前に編集した『武芸流派辞典』(昭和三十八年・人物往来社刊行)をもとに、その倍近い流名を追補し、判型をあらため、全面的に組みなおしたも のです。が、もとより、まだその全体を尽してはおりま すまい。流名の唱え、人名のよみ方にも、相当うろんな ものがあり、その配列によろしきを得ない点も若干ある でしょうし、流名を掲出しながら内容解説に筆のとどか なかったものも、ずいぶんあり、それらの不備・誤脱に 関しては、読者諸氏からの惜しみなき御叱正を心から待 ちのぞんでいます。
今次の追補版編集に際し、じつに多数の方々から好意 ある御教示にあずかりました。特に島田貞一・光田福一、青柳武明、秋元大輔、神長成佳、森田栄、吉井一雄、竹 內信義、武藤正雄、島津兼治の諸氏の御垂示に対し厚く 御礼申上げます。