漢訳対照・梵和大辞典・増補改訂版

編纂を終えて

荻原雲来博士が,故渡辺海旭博士とともに,『荻原梵和辞典』の計画を発表され て以来、半世紀を経て,ようやくその編纂事業に終止符を打つことが出来た。

本来ならば,筆者の如きものではなく、荻原博士に一文を草して頂きたいのであ るが,今はそれもかなわず,まことに遺憾の極みである。ここに,この『職梵和 大辞典増補改訂版』を,両博士をはじめ,本辞典の編纂事業に文字通り心血を注がれながらも、その完成を見ることなく逝去された先学諸賢の御仏前に捧げて,心から御冥福をお祈りするものである。

このような形で,先学諸賢の遺志がまがりなりにも実現され得たのは、ひとえに, 当財団文化委員会委員長辻直四郎先生の終始変らぬ御高配の賜物である。研究部で作成した,第7分団から補遺に至る未熟な原稿に快よくかつ注意深く目を通され,誤認を正し、補訂の筆を加えられた。とくに補遺の段階では,御病気御加療中であったにもかかわらず,惜しみなく御指導を賜わり,御閲読の労をおとり頂いた。先生の御芳情に対し、心から御礼を申し述べたい。

編纂作業の遂行に当っては、当財団文化委員会の他の諸先生からも、つねに,適 切な御助言と温かい御支援を賜わった。謹んで謝意を表するものである。

本辞典の再編纂と増補改訂版の刊行事業は, 鈴木学術財団会長故鈴木大拙博士, な佐藤喜一郎前理事長,ならびに萩原 – 現理事長をはじめとする当財団理事各位 の,不変の熱意によって,推進・達成されたものである。また別記の,曽つて研究 部に属した諸氏および現研究部員である諸兄姉の並々ならぬ御尽力こそ,本辞典編 集の原動力であった。 ここに記して,深く感謝の意を表わす次第である。

昭和53年11月
研究部部長 前田専学