蒔絵・高野松山

買取上限価格 20,000円

定価58,000円
著者高野松山
出版社講談社
出版年月昭和57年
ISBNコード

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この商品について

高野重人先生の追想

東京美術学校時代を中心に―

高野先生の年譜を拝見すると、明治二十九年、十七歳にして、熊本県飽託郡立工業徒弟学校漆工科を卒業、同四十四年、二十二歳にて京都市立美術工芸学 校一科を名、更に大正五年、二十七歳にて東京美術学校漆工科を卒業、同八年三十歳にて同校漆工科研究科を修了されている。先生は漆工芸に対する熱意 と探究心ともに旺盛であって、基礎研究に実に十余年の長き歳月を費やしておられる。繰返し繰返し黙々として漆工芸の就中、蒔絵技術に御自身納得の行くま て打込み修業されている。情熱をもって日々精励されたのである。そして、この基礎修練こそ、先生の手堅い作風となり後年、数多くの傑作を産出された原 動力となったのである。しかし先生の研究は更に続いた、すなわち大正八年より、東京美術学校漆工科教官として、約十四年の間精勤された。当時学校には、 白山松哉先生が時絵の教授であり、高野先生はその助手として、教授付であられた。大正十年四月、私は東京美術学校工芸部漆工科に入学した。

当時の学制により、入学当初の二ヵ月は予備科として、絵画、彫刻などの基礎実技を修め、九月となって、初めて本科の教室に編入された。漆工科の教室 は時給と不※とに分かれていて、窓には紙張りの障子が入れてあり、床は丁度柔道場のように畳が敷きつめてあり部屋には柔らかい外光が射し込んでいた。窓 際に生徒各自の席があり小さな漆風呂、定盤などの時絵道具が配置されていた。教室の中央に鉄製の火鉢があり実習用に使われる。一年から卒業に至る各教 室があってその業期の教室に、白山教授の席があった。白髪の美しい、割合に大柄な方である。ピカピカに磨かれた蒔絵道具があって、そこに高野先生の 席並んでいた。兼ねて高野先生のお名前は拝承しておったが、私はここで初めてお目にかかったのである。お顔の色がヒゲの故か、黒く見えた。先生が黒 光りする定盤に向って、絵漆を調合されているお姿と絵本の紅柄色とが不思議と調和して、今も私の目に残っている。高野先生が長い基礎研修を終えられた 時、この名匠、白山松哉教授にめぐり逢われ、師事されたことは、先生が長年追求された漆技の究極はこれだ、これこそ最高峰のものだと、白山教授の作品 を御覧になって思われたことでしょう。

■山教授は御承知の如く、嘉永六年江戸に生まれ、十二歳にて、江戸の人金属師能登屋伊三郎に随い、象嵌及び勤職を修業すること五年、明治二年十七歳の時、時絵師小林万次郎につき九年間時絵を修業した。明治二十四年東京美術学校助教授に任ぜられ、その後、漆工界に活躍し多くの名品を作り、明治三十年東京美術学校教授、漆工科主任となられ、大正十二年退官されるまで約三十年間、工芸教育にあたられた。伝統蒔絵の練達者で、その作風は繊麗、緻密 である。教授の履歴にある通り、金工術の修業により、蒔絵の肉取り、線書など金属的であり、独得な蒔絵技法を究められたのである。高野先生はその技法 を継承しておられる。

しかし先生の尊敬の的、白山教授は遂に大正十二年三月退官され、同年八月に亡くなられた。先生の御落胆の程は推察するにあまりある。高野先生は熱血漢であり、学校にても堂々お国言葉を堅持し、使われていた。私達生徒には、時により聴き馴れず解釈出来ないこともしばしばあった。珍談、奇談の持主であるけれども、時絵に注がれた情熱の発露の時は、真面目を以って当たり、明治の人の根強い精神を以って行動された。白山教授が亡くなられた翌年、大正十二年に、図案科の漆工製作法を担当され、蒔絵を図案専門の生徒に伝達されていた。これより先、鞘塗技法をも研修された。即ち有名な橋市こと二代目橋本市 蔵氏について、鞘塗、竹塗を修得され、ついでその技法を私達に教えて下さった。橋本技官は明治二十七年より、大正十三年まで在職しておられた、小柄な 地味な方で僅かの間であったが私も教えて頂いた。高野先生は昭和八年東京美術学校を退官され、在野の人となられた。

一応これにて先生の学校に於ける想い出はつきたのであるけれども、先生の作家としての活躍は、むしろこれからであって、精妙、堅実な白山派直系の技法を駆使され、全精力をつぎ込んだ爛熟期となり、しかも数々の作品を発表されたことは、驚嘆に価する。昭和七年帝国美術院第十三回展出品の「柏・木菟之図時絵衝立」は大作にして、特選を得、精魂傾けたこの作品の完成組立が修了したところ、大きくて工房一杯となり運び出すのに柱を截って、出品したという伝説まである。ついで翌年、第十四回帝展出品の「乾漆おはぐろ蜻蛉」(昭和三十二年ソ連政府買上) 特選となり、平目打込みの金地に、表面上、おはぐう蜻蛉、側面に溝を描き、誠に見事な配置で、私の最も好きな作品である。更に昭和九年第十五回帝展出品の「蓬萊模様蒔絵手箱」は曲線の箱の面に敷き つめられた橋の折枝、梅文など描かれ、華麗なる作品である。

当時の時絵界は工芸部が帝国美術院に設置された昭和初期以来、意気込みは非常なもので、勢い余って、ややもすると、その造形は、平面、立体に装飾過剰 り気味となり、工芸含界は読演という情況であった。その中で先生は構図を程良くまとめられている。高野先生は、奇しくも明治二十二年、東京美術学校開 ド、年に建生され明治中期から大正、昭和期と変遷甚だしい世相の中、工芸の教育も、徒弟制度から移り変り、学校教育となり、その双方を経験され、修業 、道を長け、ぎに得難い存在にまで大成されたのである。

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